長野県千曲市 小川修一市長 インタビュー
ーー TVアニメ「Turkey!」の舞台は長野県千曲市となります。千曲市長として、今の率直な感想をお聞かせください。
小川:7月から放送が始まり1ヶ月が過ぎましたが、ネットでも地元でもたいへん盛り上がっていて、非常に嬉しく思っています。考察されている方も多く、気にしてくださっているのが伝わってくるので、嬉しい限りです。
ーー 千曲市が舞台になった経緯を教えていただけますか?
小川:株式会社ポニーキャニオンさまと、地域活性化など、相互の連携を強化する包括連携協定を結ばせていただきまして、その中でアニメの舞台のお話をいただきました。それを聞いたときは「うちが選ばれたのですか!」と驚きましたし、とても嬉しかったです。今後は、観光なども盛り上げていきたいのですが、放送されてからわかったこととして、作品をきっかけに「地元には、こんなに良い場所があるんだ!」と市民が思えたんですね。それが地元愛の醸成にもつながったと思っています。
ーー 物語が、青春ボウリングアニメではなく、女子高生が戦国時代にタイムスリップするという話だと知ったときは、どう思いましたか?
小川:私は市長の立場なので、企画書やシナリオを事前に拝見していたのですが、知ったときは「えっ!?」と思いました。ですが、世代的に、映画「戦国自衛隊」や「バック・トゥ・ザ・フューチャー」が好きだったものですから、自分のツボにはまりまして、「これはきた!」と嬉しい気持ちになりました。なので、むしろ感謝の気持ちがあります(笑)。
ーー タイムスリップする話は、面白いですよね。
小川:自分の中でも、タイムスリップものは面白い作品が多いという印象がありますし、この地域は、戦国時代まで遡れば、武田信玄と上杉謙信の戦いがあった場所でもあるんですね。そういった意味で、戦国時代に目をつけてくださったことも嬉しく思います。
ーー いわゆる、川中島の戦いですよね。
小川:まさにそうです。大河ドラマ『風林火山』のロケ地になった場所もあるんですよ。
ーー 市長としては、長い期間、内容を外に漏らさないようにして過ごしていたのですね。
小川:もちろんです!ネタバレ厳禁だったので、ずっと話すのを我慢していました(笑)。それも含めて、皆さんが観たとき、どういう反応をするんだろうと楽しみにしていましたので、今はすっきりした気持ちです。
ーー それが明かされたのは、千曲市で行われた先行上映会のときでした。実際、どんな反応でしたか?
小川:会場はどよめいておりました。一瞬の沈黙があって、その後「えぇええ〜」という感じになったのですが、私はニヤリとしていました(笑)。
ーー 先行上映会自体の盛り上がりはいかがでしたか?
小川:市民向けに、いろいろなところで告知をしたのですが、平日からの申し込みにも関わらず、1日でいっぱいになってしまいました。親子三代で来てくださった方もいて、非常に幅広い世代の方に観ていただけた印象があります。もちろん県外から来てくださる熱心な方も多かったので、期待してくださっているのが伝わってきました。
ーー 千曲市民が多かったのでしたら、なおさら驚きますよね。
小川:かれこれ3年くらい前から施策はしていますからね。姨捨駅の景色を描いたキービジュアルを市報の表紙にして以来、「まだかまだか」と、市民の方からもお問い合わせをいただいていたんです。ずっとお待たせしていたので、その意味で、期待している方は多かったと思います。
ーー すぐに戦国時代に行ってしまったことを、怒っていないですか(笑)。
小川:いやいや。市民の方はむしろウェルカムで、物語の今後の展開について意見をくれたり、喜んでくださっています。地元の方だと映像を見たらわかるんです。ここはあのへんだとか、あの建物はあれじゃない?って。それを見ては、興奮しております(笑)。
ーー この取材時で第5話まで放送されていますが、ここまでの展開はいかがですか?
小川:ボウリング部と戦国時代という、一見「何で?」というところから入るんですけど、一人ひとりの人物の描写がとても丁寧で、セリフもひと言も聞きもらせないくらい、考えられた脚本だなという印象があります。背景も音楽もすごく良くて、流れている歌も良いんですよね。総合的にクオリティがすごく高い作品だと思っています。普段、私はアニメを観ないので、他作品と比べることはできないのですが、こんなに素晴らしいんだ!と興奮しましたし、アニメは総合芸術だなと感じました。
ーー シリアスなエピソードもあるので、最後に大きな感動が待っているのではないかな?と想像してしまいます。
小川:私は、4話や5話あたりで、すでに感動していまして……。いつも夫婦で観ているのですが、最近涙もろくなったので、涙ぐみながら観ていました。青春っていいなと思いながら、毎週3回は観ているんです(笑)。
ーー 今、実際に千曲市では、どんなことが行われているのでしょうか?
小川:当然、聖地巡礼は期待しているところですので、そういった企画を考えております。それは今後、詳細が決まり次第、皆さんにお知らせできたらと思っています。
ーー 商店街では、ポスターが貼られていたり、好意的な雰囲気がありますよね。
小川:そうなんですよ。ポスターもですけど、のぼり旗も作りまして、それもお店の前に立てていただいたのですが、足りなくなってしまい、今はのぼり旗を追加している状況です。
ーー アニメを観て、行ってみたいスポットが、たくさんあるなと思いました。
小川:ありがとうございます。長野県ならではの緑の多さですとか、山の様子、川の雰囲気も、アニメでは忠実に再現されているんです。自然は、時代を越えても変わらないものですから、そういう意味でも嬉しく思っています。
ーー 「Turkey!」の聖地巡礼マップも作っているところだと思うのですが、市の魅力を教えてください。
小川:作品の中で出てきたところは、ぜひ実際の景色と比較していただきたいですね。中でも驚いたのは、道祖神が出てくるところ(第4話)で、あの場所をよく見つけてくださったなと思いました。きっと千曲市の隅々までロケハンをしてくださったと思うので、聖地を周っていただければ、今の千曲市の暮らしをなぞれるような、生活の様子などが確認できる聖地巡礼マップになればいいなと思っています。
ーー やはり姨捨駅は、スポットとしてもオススメですか?
小川:JRの駅で、姨捨駅からの眺めは「日本三大車窓」のひとつと言われているんです。だから「Turkey!」だけでなく、他の映画やドラマのロケ地としても使われることが多いんです。最近では、北川景子さんが主演のドラマ「あなたを奪ったその日から」のクライマックスでも使われていました。なので「Turkey!」と合わせて、姨捨駅は多くの方に知っていただけている場所なのかなと思っています。
ーー 棚田が一望できるんですよね。
小川:そうですね。棚田と、その先に、それこそ「川中島の戦い」の戦場になった善光寺平と言われる長野盆地全体を見渡すことができます。
ーー 棚田は、いつの季節がきれいなのでしょうか?
小川:いつ来てもきれいですが、昔から月の名所としても知られていますので、秋ぐちですかね。あとは夜景が実はきれいなんですよ。昼間の景色も素晴らしいですが、夜景もきれいなので、それに関してはいつ来ても楽しんでいただけると思います。
ーー 戸倉上山田温泉も、千曲市のスポットではありますね。
小川:まだまだ全国的には知名度が低いですが、これを機に訪れていただければと思っています。レトロ感も若い方には新鮮に映るのかなと思っていますし、それもアニメの映像の中にしっかり描かれていましたので、嬉しかったです。
ーー アニメで出てきていないところで、良いスポットはありますか?
小川:ステッカーやポスターになっている、四季折々の景色のイラストが楽しめる「Turkey!×Chikuma City」というのがあるんですけど、春だと、あんずの里であんずの花と、夏は森将軍塚古墳とキャラクターが描かれているので、そういった観光地は、おすすめとなります。
ーー 稲荷山の蔵の街も、気になっています。
小川:稲荷山も良いですね。まだ発展途上の場所で、さらに整備をして、皆さんが訪れやすいようにしたいと思っています。「重要伝統的建造物群保存地区」にもなっていますので、しっかりとやっていきたいです。
ーー ちなみにモデルになったボウリング場は、お隣の長野市にあるんですよね。
小川:そうなんです。千曲市にボウリング場はなく、市民からすると、行くならあそこのボウリング場に行く、という場所なんです。たまたま行政区画で分かれましたが、昔は同じ地域にあったので、あのボウリング場も地元だと思っています(笑)。でも、歌舞伎町シネシティ広場で行われたイベントのように、ボウリングのレーンをお借りして、作中に出てくる場所でボウリングができたら楽しいだろうなと、個人的には思っています。
ーー 食べてほしいものはありますか?
小川:実は、名物というような特徴的なものは少なく、何でも美味しいんです。野菜とか果物とか水とか、素材そのものが美味しいのだと思います。で、いわゆるローカルなメニューとなると「おしぼりうどん」というのがあります。辛味大根の搾り汁につけて食べる釜揚げうどんで、信州味噌などで味の調整をするのですが、それがこの街の郷土料理のひとつです。あと「おやき」は、長野県、特に北信濃エリア全般に普及している郷土料理になります。
ーー では最後に、アニメファンへメッセージをお願いします。
小川:私も毎週楽しみに観ていまいて、オリジナルストーリーなので、次にどうなるんだろうとドキドキしています。笑いあり涙あり、スリルとサスペンス、全部が入っていると思うんです。一人ひとりのキャラクターが、どういう想いでいるのかもしっかり描かれているので、本当に面白いです。細かいことは気にせず、ツッコミながら見るというのも楽しみ方のひとつだと思っていますので、皆さんも楽しく最終回まで見届けてください。一緒に楽しみましょう!